演劇

演劇が好きだ。多分これからも一生好きだ。一生って言葉を使うと途端にちんけになるな。けれど高校で演劇を始めてから、演劇のことがずっと好きだ。演じるのも好きだし、観るのも好きだ。

 

それはそうと、これを読んでくれている方の中で演劇に関わったことのある人はどれだけいるだろうか?きっと演劇をしたことがある人は殆どいないだろうし、観劇にまで枠を広げても、そう多くはあるまい。演劇というものは、非常に閉鎖的な空間であり、中々とっかかりづらい、ハードルの高い娯楽になっていることは間違いない。劇場に行っても、多くが演劇関係者・演者の知り合いである。終演後、キャストとその知り合いがわちゃわちゃ話しているのを横目にしながら、部外者の僕は気まずくて、毎度毎度いそいそと帰る。かなりの頻度で劇場へ通う自分でもそうなのだから、映画のようにフラッと演劇を観に来る人は本当に少ない。だからこそこの場を借りて、せめてこの文章を読んでくれているあなたには、拙いながらも演劇の魅力を伝えたいとおもう。

 

自分が演劇に関わり始めたのは高校生の時演劇部に入ったからだ。入部した理由はひどいもので、「かわいい先輩がいたから」である。非常に俗っぽい。動機が動機だから、最初はそこまで熱量もなかった。最初は、セリフも全然覚えられず、あまり楽しくなかった。

けれど初めて立った公演で初めて拍手をもらった時、とてつもない興奮を覚えた。自分自身へ向けられた直接的な拍手をもらったのは初めてだった。その喜びに、全てが報われた気がした。多分、それからしばらくにやにやしてたと思う。僕は演劇にはまった。虜になった。

それから演劇部として活動する中で、何度か人を泣かせることが出来た。演劇は人の感情を揺さぶれる。もっとうまくいけば、他人の記憶に残って、他人の人生の一部になれる。何も持っていない自分でも、頑張ってひねり出せば誰かの一生に爪痕を残せる。こんなに面白いことはない。

 

勿論、観劇することも大好きだ。北海道、特に札幌の演劇界は非常に面白い。非常にレベルの高い多くの劇団が毎週何処かしこで公演をやっているし、価格帯も非常に手ごろだ。劇場の立地も大体が交通の便がいい。さらに夏と冬で演劇シーズンという催しが開かれ、1ヶ月半に渡り過去評価の高かった作品が札幌の様々な劇場で楽しめる。さらには高校演劇でも石狩支部は全国大会で入賞するような学校が集まっている。今、札幌の演劇は熱い。

ドラマや映画で笑ったり、涙したり、やるせなくなったりした経験は誰しもあるだろう。テレビや映画の画面を介したとしても、他人の物語は僕たちに大きな影響を与える。それが虚構であると知りながらも熱中しハマる。ではこれが演劇になるとどうなるか。僕たちと物語を隔てていた「画面」がなくなるのだ。目の前で、物語が、虚構が、目くるめく展開されていく。画面越しには決して伝わらない「空気感」が「熱量」がダイレクトに観客へ伝わってくる。空間に没頭する。それはテレビの比ではない。逆に言えば、生だからこそ一つのミス、下手な演技・演出で一気に今日が覚める怖さがあるのだが、それも含めて舞台の魅力といっていいだろう。

「告白されるなら直接がいい。好きって気持ちが伝わるから。」っていうような当たり前のことを多くの人が珍妙な顔で語っているけれど、他の感情だって直接言われた方が実感を伴うにきまってる。観劇してると色々な感情が身に迫って伝わってくる。それにたまに疲れることもあるけれど、興奮の方が何倍も上回る。人の感情を身に浴びることは、とてつもなく面白い。

 

演劇をいきなり始めることは、たしかに難しいと思う。けれど、演劇を観ることはあなたが思っているより簡単だ。劇団のHPにいって、予約して、劇場へ向かうだけ。生産は劇場で現金払い。札幌ではその月の公演情報がまとめられたサイトまで完備されている。

演劇はやる側だけでは成立しない。観客がいて初めて成立する。つい先日、キャラメルボックスという超有名劇団が赤字を理由に活動を停止した。いまや既存の演劇ファンだけでは演劇は成立しなくなってきた。気軽に、映画館に行くように劇場に来てくれる新しい演劇ファンが演劇界に必要だ。このままでは演劇が終わってしまう。

 

演劇は本当に面白い。

そこに知識はいらない。本質は映画と変わらない。気軽に楽しんでいい娯楽の一つなのだ。

この文章を読んで、少しでもあなたに演劇の魅力が伝われば幸いである。

 

 

ps.上記に示した札幌の演劇についてまとめられたサイトのリンクを載せておく

https://d-sap.com/