スイカ

イカが美味しい季節である。完璧に熟した、甘くてみずみずしいスイカは格別にうまい。種を出すのが少し億劫だけど、慣れてしまえば楽しいもんだ。実家にいた時は毎年飽きるほどに食っていたのだが、けれども一人暮らしを始めてから全く食べなくなってしまった。スイカは難しい。一玉丸々買うには高いし食い切れないし、4分の1カットを買うのも、それではスイカの魅力が半減してしまう気がする。一玉まるまるをぶつ切りにすることにスイカの趣があると思う。まったく一人暮らしに向いてない果物ランキング1位である。

 

先日、実家へ帰省した。帰省と呼ぶには頻繁に帰りすぎている気もするし、あまりにも短い滞在時間ではあったけれど。「帰るならもう少し早く連絡くれれば良いのに」「もっとゆっくりしていけば良いのに」なんて母に言われながら、自分は猫を撫でていた。

実家のすごいところは、やっぱり夏になると当たり前にスイカが常備してあることだと思う。この前も弟と将棋を指していると、親から大きく4分の1にカットされたスイカが出された。これまた甘くて滅茶苦茶美味かった。猫を撫で、スイカを食いながら将棋を指す。我ながら、夏の風情の大盤振る舞い、右ストレートである。

 

さながらスイカを買う買わないってのは、その人の環境を如実に表す指標になっているのかもしれない。1人じゃ買わない、2人以上で住んでいてもスイカって結構高いから、あんまり買わない。そこそこ経済的に余裕があって、かつ誰かと一緒に食べられる、ないし、食べさせたい相手がいる場合にのみ、スイカをまるまる一つ買うことができるのだ。「とんかつを何時でも食べられるくらいの豊かさを持ちなさい」という至言があるが、「夏になったらスイカを気兼ねなくスイカを食べられるようになりなさい」っていう言葉を、ここに残しておきたい。

あー、スイカ食べてえ。

 

 

 

P.S ところで、この前実家から帰る時、親が家にあるものをこれでもかと持たせてきて、なんなら作り置き用のおかずを態々作って持たせてくれた。年を得る毎に、典型的な、久々に帰省した息子に対する親の対応を地でやってくるようになってしまった。勿論、貧乏大学生からしてみればありがたい話なのだが、なぜだか少し寂しさを感じる。